起業家: Entrepreneurと社内起業家: Intrapreneurの違いと、近年注目を集める「客員起業家制度(EIR)」について

技術進歩の高速化によるプロダクトライフサイクルの短命化や、VUCA時代に伴う将来の見通しが不確実な現代において、全ての企業がイノベーション創出に取り組むことは不可欠と言えるでしょう。
企業は社内ベンチャーのような取り組みを通じて、未だ解決できていない社会や顧客の課題を解決し、新しい価値の創造の取り組みを行う必要があります。
ここでの社内ベンチャーとはRoberts and Berryが1985年に定義した「既存組織の中に別々の主体を設置し、企業が現在進出していない市場に進出したり、または既存の事業で扱っているものとは大分異なる製品を開発したりする試み」を指しています。
そんな時代の潮流において社内から新しいアイデアを生み出し、開発から収益化までを意志と熱量、責任感を持ってイノベーションをリードしていく「社内起業家」の存在は企業にとって非常に貴重な存在であり、そのような人材を獲得、育成していくことが企業としての必須条件であるといえます。
一方で、社内起業家がなかなか生まれてこない理由として、
- 起業家精神が弱い、事業に失敗したときのリスクが大きい(と感じている)
- 起業に必要な経営リソース(事業資金、人脈、ノウハウ)が不足している
- 金銭的あるいは社会的な面でのリターンが十分に得られない
- 新規事業創出に対する評価制度が整っていない
などといった要因があることも事実としてあり、企業として「新規事業を創出したい」「新規事業が生まれる仕組みを作りたい」「社内起業家を獲得、育成したい」という想いと、社内起業家が生まれてこないといったギャップに頭を悩ませられているのではないでしょうか。
そんな状況において、「社内ベンチャー」や「社内起業家」の他に新たに注目が集まっている仕組みとして「客員起業家制度(Entrepreneurs In Residence)」という制度があります。
本記事では、起業家と社内起業家の違いを説明した上で、新たに注目が集まっている客員起業家制度とは何か、客員起業家制度のメリット、事例を紹介していきます。
「起業家: Entrepreneur」と「社内起業家: Intrapreneur」の違いとは?
1. 社内起業家: Intrapreneurとは何か
社内起業家とは、企業内で新規事業開発を行ったり既存事業の改革を行ったりする人材であり、企業の中(in)におけるアントレプレナー(Entrepreneur)ということでイントレプレナー(Intrapreneur)と呼びます。アントレプレナーには当然の如く、新しい価値を生み出す発想力や、ビジョン、個人としての意志(Will)、最後までやり遂げる力、決断力などなど内面的に備える必要のある資質/志向性、すなわちアントレプレナーシップ(Entrepreneurship)を保有している必要がありますが、社内起業家であるイントレプレナーにおいても同様に必要な資質/志向性です。
一方で、社内起業家は企業に属するため、企業の顧客基盤・資金力・組織力・人材・ブランド力を利用できる可能性があります。ここに、起業家との大きな違いがあります。
2. 社内起業家: Intrapreneurの特徴
社内起業家も起業家も、アントレプレナーシップのような内的要素の必要性に大きな違いはありません。どちらの場合においても必要な資質であり志向性であるといえます。
一方、先にも述べた通り、社内起業家は企業に属することから企業の顧客基盤・資金力・組織力・人材・ブランド力を利用できる可能性があり、すなわち外的要素に起業家との違いがあるといえます。この外的要素を上手く活用するためにも、社内起業家の内的要素に特徴を加えるとするならば、「社内の調整力」は新規事業開発を有利に進めることのできる重要な内的要素となるでしょう。
3. 起業家: Entrepreneurと社内起業家: Intrapreneurの違い
外的要素に対して社内起業家と起業家には違いがあると述べましたが、起業家と社内起業家の違いとして良く取り上げられるのが、①企業の経営リソースの活用可否、②挑戦に対するリスクと精神的負荷、③決裁者、④評価軸、⑤制約や条件の5つの観点です。
企業の経営リソースの活用可否
社内起業家は決裁者の承認を得ることができれば所属企業の経営資源であるヒト・モノ・カネ、情報という資産を活用できるため、事業の成長にレバレッジを効かせられる可能性が高いです。ここでいうヒト・モノ・カネ・情報とは先にも述べた企業の顧客基盤・資金力・組織力・人材・ブランド力などになります。
一方で起業家は、起業するときは知名度・信用度ゼロの状態でのリソース獲得をしていかなければならず、ヒト・モノ・カネ・情報の獲得が社内起業家と比較して困難であることが多いです。
挑戦に対するリスクと精神的負荷
一般的に社内起業家は企業の従業員として基本給や業務委託料などの固定給を得ながら新規事業創出を行なっていくため、仮に新規事業創出の挑戦に失敗したとしても一般的には即刻解雇になるようなことはありません。このように、社内起業という挑戦に対しての金銭的リスクが低く、精神的な負荷が低いことは社内起業家のメリットになります。
一方で、起業家は、企業に属していませんので当然月給制のような固定給や業務委託料などは無く、資金調達や自己資本、事業による収益から自身の給与を得ていくしかありません。また、仮に新規事業創出(起業)に失敗した場合は資金が枯渇して自らの金銭的資産を確保できない可能性があり、最悪の場合、自己破産というルートを歩む可能性も無きにしも非ずなのです。ゆえに、社内起業家と比較して金銭的リスクが高く、精神的な負荷も高い傾向にあるといえます。
決裁者
新規事業創出を進めていくにあたり、資金やリソースを投資してもらうために決裁者に承認を得なければならない場面が出てくるかと思います。社内起業家の場合、その決裁者は自社の経営陣になるでしょう。新規事業開発が進むにつれて取締役会などにも招集されてGo/No Goが決議される場面が出てくると思われます。
一方で、起業家の場合は、株主が決裁者となり投資判断を下します。当然、自身が支配株主の場合もあり、自己資本で全ての投下資本を賄うこともあるかもしれないですが、多くはVCや個人投資家などの株主から資金を募ることが多いです。
評価軸
新規事業創出を進めていくにあたり、各ポイントで新規事業の評価を得る場面があるかと思います。評価軸は定量的であることが多いですが、社内起業家の場合は、決裁者が自社の経営陣であることから、将来的に企業の経営計画の一端を担う事業として売上高/利益で評価されることが一般的です。
一方で、起業家の場合は株主が決裁者であることからも時価総額で評価されることが一般的です。
既存事業による制約や条件
社内起業家は既存事業との関わり方も気にする必要があります。企業の方針にも依りますが、既存事業とのカニバリゼーションを避ける要求や、既存事業と同等程度の売上高/利益を短期間に求められ、達成できなければ新規事業創出はクローズしてしまうといった条件など、企業に属し、決裁者が経営陣である以上、所属企業の方針に従う必要があります。
一方で、起業家は既存事業による制約や条件などは無く、自由度が高いことが最大のメリットといえるでしょう。
このように、社内起業家と起業家では外的要素に多くの違いがあり、これらの違いを理解した上で新規事業開発を推進していくことが求められていきます。
4. 社内起業家(Intrapreneur)の事例
ここまで社内起業家と起業家の違いを見てきましたが、ここでは社内起業家の実際の事例はどのようなものがあるのかについて、国内外の事例を見ていきたいと思います。
日本における事例
・スープストックトーキョー
食べるスープの専門店として全国展開する『Soup Stock Tokyo(スープストックトーキョー)』は皆さんも見かけたことがあるのではないでしょうか。スープストックトーキョーを生み出したのは元三菱商事で現在は、株式会社スマイルズの代表取締役である遠山正道さんという方です。
遠山さんは新卒入社で入った三菱商事にて、都市開発部門を経て情報産業部門に所属していましたが、「生活に身近な仕事がしたい」と、自ら手を挙げて関連会社である日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社に出向しました。そして在籍時にスープ専門店を起案し、『Soup Stock Tokyo』を立ち上げたのです。その翌年、社内ベンチャーとして三菱商事株式会社コーポレートベンチャー0号の株式会社スマイルズを設立。それから8年後の2008年にMBOによりスマイルズの株式100%を取得し、オーナー社長となりました。
・リクルートマーケティングパートナーズ
リクルートマーケティングパートナーズは2012年に設立された、リクルートホールディングスを親会社とする社内ベンチャーです。
数々の事業化をさせてきた当社内ベンチャーですが、中でもオンライン学習アプリ「受験サプリ(現:スタディサプリ)」は、地域差や所得差による高校生の教育格差をなくしたいという思いから、リクルートグループの新規事業提案制度「Ring」によって誕生しています。
スタディサプリを立ち上げた、山口文洋さん(現リクルートマーケティングパートナーズ 代表取締役社長)は中途入社したリクルートで進路選択やキャリア支援教育の部署に配属されました。そこで「進路選択やキャリア構築のためには勉強が必要なのに、リクルートとしてその支援ができていない」との問題意識からアイデアを検討し、「New RING」にエントリーし、スタディサプリを立ち上げています。
海外における事例
・スナップタックス
スナップタックスとは、iPhone内臓カメラで資料をスキャンする納税申告書が完成する会計ソフトの世界最大手であるインテュイットの社内ベンチャーとして立ち上がりました。
2010年にアメリカ、カリフォルニア州で配信をスタートさせ、全米対応版がリリースされると、 3週間で35万ダウンロードを超える人気ソフトにまで成長しました。
スナップタックスは、インテュイットのプロダクトであるターボダックスという商材と競合していましたが、イノベーションによる成長環境を整えたことで、わずか5名の立ち上げメンバーから大きな収益の獲得に成功したのです。
2 社内ベンチャーの新潮流、客員起業家制度(EIR)について
客員起業家制度(EIR)とは何か
さて、これまで社内起業家と起業家の違いについて論じてきましたが、社内起業家のメリットは
- 企業の経営リソースの活用
- 挑戦に対して金銭的なリスクが低いことによる心理的負荷低減
の2つがあったと思います。
一方で、起業家は起業するときは知名度・信用度ゼロの状態でのリソース獲得をしていかなければならず、ヒト・モノ・カネ・情報の獲得が困難であることが多く、また、企業に属していませんので当然月給制のような固定給や業務委託費などは無く、資金調達から自身の金銭的資産を獲得していくしかありません。さらには、仮に新規事業創出(起業)に失敗した場合は、資金が枯渇して自身の金銭的資産も確保できない可能性もあり、最悪の場合、自己破産というルートを進む可能性もあり得るといったリスクを抱えているということも述べました。
社内起業家は起業家と比較してメリットが多くあるようにも見えますが、まだまだ企業の新規事業開発に対する評価制度や育成制度、組織体制が整っていないことなども影響して社内起業家が増えていないのが現状であることも事実であり、一方で企業としては一刻も早く新規事業を創ることのできる人材の獲得が急務で、新しい収益柱となる新規事業の創出を求めています。
そこで近年注目されているのが客員起業家制度(Entrepreneurs In Residence)です。客員起業家制度(EIR) とは、起業を含めたビジネスにおいて経験豊かな人材が、受け入れ機関(企業、 VC、大学など)に在籍して起業を行う、客員起業家を雇用する制度のことです。
客員起業家制度(EIR)の起源
日本では聞き慣れない客員起業家制度(EIR)ですが、もともとはシリコンバレーで始まりました。
ベンチャーキャピタルが、次の投資対象になるベンチャーを作ってもらうために、ビジネスの立ち上げから成長、EXITまでを経験した優秀な人材に基本給を保証しはじめたことで、この仕組みが生まれました。
客員起業家制度(EIR)の目的
企業としては一刻も早く新規事業を創ることのできる人材の獲得が急務でありますが、現状では社内から起業家を十分に登用できている状況ではないと思います。新規事業に関わる経験が豊富な人材を獲得し、新規事業創出の成功確度を高めたい。客員起業家制度は、ビジネスの立ち上げから成長、EXITまでを経験した社外の優秀な起業家人材を社内に招き入れて、確度の高い新規事業創出を推進していくことが目的です。
社内起業家と客員起業家の違い
社内起業家の場合、既存事業については熟知していますが、既存事業外に対する知見が少ないため、新規事業の発想に制約がかかってしまいます。また、新規事業に関わる経験が乏しいことから事業成功の確度が低くなってしまう傾向にあります。
一方で、客員起業家制度では社外から経験豊富な起業家を招くため、客員起業家によるイノベーティブなアイデアや専門性を活かした新規事業創出が可能となります。また、ビジネスの立ち上げから成長、EXITまでを経験した優秀な人材を獲得できれば、事業成功の確度が高くなる傾向にあります。
客員起業家がもたらすメリット/デメリット
客員起業家が制度(仕組み)として成立するには、それだけの理由があります。
企業や起業家にとってどのようなメリット/デメリットがあるのか押さえておきましょう。
企業へのメリット/デメリット
メリット
①新たな収益源の開発
企業内で新規事業を創出する「社内ベンチャー」の主な目的でもありますが、大企業等では、既存事業が成熟し切っており、オペレーション化していることが多々あります。
会社の土台を盤石なものにするため、社内にポジティブな風を吹かせるために求められるのが「新たな収益チャネルの開発」であり、客員起業家はその担い手として期待できます。
②社内起業家に対する優位性
新規事業の創出を目指すにあたり、リクルートやサイバーエージェントに代表される「新規事業提案制度」や、社内起業家というあり方が流行していますが、客員起業家制度にはこれを上回るメリットもあります。
・社内起業家は、人材を社内から登用するため人材育成にもつながるというメリットがありますが、新規事業に関わる経験に乏しいあまり、質の高い提案は出づらく、事業成功の確度も低くなりがちです。
客員起業家制度では社外から起業家を招くため、優秀な人材や新規事業創出の経験が豊富な人材の力を借りて、確度の高い事業創出が可能となります。
・社内起業家の場合、既存事業については熟知していますが、既存事業外に対する知見が少ないため、新規事業の発想に制約がかかってしまいます。
→客員起業家制度では社外から起業家を招くため、客員起業家によるイノベーティブなアイデアや専門性を活かした提案、事業創出が可能となります。
デメリット
①新規事業創出の失敗による損失
企業のデメリットは新規事業創出に失敗した場合に損失が発生してしまうことです。新規事業は不確実性が高く、取り組んだ結果、失敗に終わる可能性もあります。また、客員起業家に一定の報酬(固定給や業務委託料など)を支払い続ける必要があるため、ある程度まとまった資金が必要になります。それゆえ客員起業家制度は、資金力がある大手企業で多く採用される傾向にあります。
一方で、1つの新規事業創出が失敗に終わったとしても、その経験が企業としての知見となり、次の新規事業創出に繋げることができるのも事実です。ゆえに、新規事業の失敗が一概にデメリットとは言い切れないといった見方もあります。
起業家へのメリット/デメリット
メリット
①生活保障によるリスク軽減
起業家が事業を立ち上げるにあたって、最大の障壁となるのは経済的な負担です。安定的な生活の基盤がなければ、副業や資金集めを余儀なくされ、集中して事業に取り組むことができません。
客員起業家制度では、企業から一定期間の報酬(固定給や業務委託料)を得ることにより経済的リスクを軽減しながら事業立案に集中できるため、起業家にとって「生活保障」の機能を果たします。
②企業のリソース活用
客員起業家が企業内で新規事業を立ち上げるにあたって、企業のヒト・モノ・カネ・情報のリソースを確保し、最大限活用することで事業創出・成長を有利に進めることができます。
ヒト・モノ・カネ・情報のいずれの観点も企業の方針や経営状況、前提条件、雇用形態によって活用可否判断は状況により異なりますが、各観点において次のような企業リソースを活用できる可能性があります。
- ヒト観点での企業リソース
企業内で協力者を募ることで、事業創出・成長に対する人的リソースの活用。 - モノ観点での企業リソース
設備やワークスペースなどの物理的リソースの活用。 - カネ観点での企業リソース
資金の活用。成長ステージごとに必要な資金の補完を得られる場合もある。 - 情報観点での企業リソース
企業が有する知見や専門性の活用。
企業の看板があることによる社会的信用や販路の活用。
デメリット
①社内調整の必要
起業家へのデメリットを挙げるとするならば、それは「社内の調整」の対応が必要になる場合があることです。冒頭に社内起業家の内的要素に特徴を加えるとするならば、「社内の調整力」は新規事業開発を有利に進めることのできる可能性があると述べましたが、社外から招かれた客員起業家が社内の文化や政治に順応できず、新規事業開発を上手く進められないといった可能性も無きにしも非ずです。
この観点に関しては、企業側が評価制度や体制を整備し、社外から招いた客員起業家が新規事業開発に没頭できる環境を整える必要があるでしょう。
客員起業家制度(EIR)の事例
では、実際に国内外でどのような客員起業家制度の事例があるのかを見ていきたいと思います。
日本における事例
- 株式会社ブロックチェーンハブ
2017年2月に日本初のブロックチェーン専門の創業支援拠点を設置しました。
2019年10月には客員起業家制度を導入し、一貫して起業家の創業支援に取り組んでいます。インキュベーションセンターへの入居制度と併せて、説明会を開催しています。 - 三菱東京UFJ銀行、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
国内の先端技術シーズをもとに、グローバルな次世代産業をリードする人材を支援することを目的としたプログラム「M-EIR(MUFG Entrepreneurship in Residence)」を実施しています。
選考された人材は、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社で2年間有期雇用され、ベンチャー支援業務への従事などを通じて、CEOに必要な経験や専門的な知見を深めるとともに、米国のプログラムへ挑戦する機会が得られます。 - デライト・ベンチャーズ×DeNA
独立系ベンチャー・キャピタル、デライト・ベンチャーズは、DeNAの社員や他企業の社員等を対象に、アイデア発掘からサポートして新規事業立ち上げ・起業支援を行う「ベンチャー・ビルダー」(以下「VB」)事業を展開しており、①事業企画、②検証、③開発・運営、④スピンアウトの4つのフェーズがあります。
①事業企画、②検証後に審査を通過すると、スピンアウト準備に向けた開発・運営フェーズに入り、その際にEIR(Entrepreneur in Residence:客員起業家)制度が採用され、デライト・ベンチャーズから報酬 をもらいながら、また元DeNAの取締役CTOで『モバオク』や『モバゲータウン(現モバゲー)』を開発した川崎修平氏をはじめとした実績十分なエンジニアなど、DeNAやデライト・ベンチャーズのリソースを使いながら起業準備ができることが特徴です。そして外部のベンチャー・キャピタルからの資金調達によって、最終フェーズであるスピンアウトを果たすことをゴールとしています。
海外における事例
米国のトップ大学においては、起業支援オフィスやビジネススクールを中心に多くの EIR が在籍します。例えば、MITの起業センター、スタンフォード大学の社会起業家プログラムにおける EIR 、そして、ハーバード大学のイノベーションラボでは 20名近くの EIRが在籍しています。
EIRの具体的な雇用体系については、雇用機関と目的によって多様な点が指摘されており、例えば、客員起業家が組織に所属する際のオフィス・スペースを提供する場合や事務補助のサポートがある場合、さらに報酬が支払われる場合など、目的に合わせて処遇が大きく異なります。
大学に所属するEIRの場合、客員起業家は、市場調査、ビジネスモデルの構築、そして資金調達など、経営に関わる業務を請け負い、一方で大学の研究者は研究開発の責任者となる事例が多いです。
まとめ
社内起業家も起業家も、新しい時代に合った新しい事業を生み出し、企業ないしは世界の持続的な成長を担う貴重な存在です。外的要素にいくつかの違いはあれど、共通した内的要素であるアントレプレナーシップを存分に発揮して、イノベーションを生み出すための環境を提供することは企業としての責務であるといえます。そのための1つの仕組みとして客員起業家制度(EIR)があり、本記事で客員起業家制度に対する理解が深まれば幸いです。
一方で、社内起業家、及び客員起業家制度を用いた場合は社外から招いた客員起業家の決裁者になるのは企業の経営陣です。企業の経営陣は今までの効率一辺倒や実行偏重の思考からイノベーション重視への思考へと変わらなければなりません。社内の経営資源は限られており、事業機会をとらえた柔軟かつ俊敏な、すなわちアジャイルな経営資源の選択と集中が求められるでしょう。
また、社内起業家や客員起業家などの一部の人がイノベーションを創出するのみならず、全社的に新たなアイデアと経営資源をフル活用してイノベーション創出に取り組まなければならないですし、そのためには、イノベーション創出に合った企業文化の醸成と報酬制度体系などの構築も急務です。今回ご紹介したような客員起業家制度も活用しながら、大目的である新規事業の創出に向けた企業としての戦略的な取り組みが今後も求められると考えます。
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