シナリオプランニングとは?やり方やシナリオの書き方を徹底解説

昨今は、「VUCAの時代」と言われるように外部環境の不確実性が高い状況にあります。そのような時代において、中長期的な視点で戦略や施策を立案するためには、5~10年後の未来やそれに伴う事業環境の変化も視野に入れることが重要です。本記事では、そのような場面で有効な「シナリオプランニング」について、詳しくご紹介します。
Contents
シナリオプランニングとは
はじめに、シナリオプランニングの概要と特徴について説明します。
(1)シナリオプランニングの概要
シナリオプランニングとは、中長期的な将来において「起こり得る未来」の可能性を複数描き、その結果を様々な検討の材料として活用する手法のことです。元々は軍事戦略として用いられていました。
1960~1970年代にかけて、石油メジャーのロイヤル・ダッチ・シェル社がシナリオプランニングによってオイルショックの危機に対応したことで、企業におけるシナリオプランニング活用が注目されるようになりました。
1990年代以降、日本国内でも多くの企業がシナリオプランニングの手法を取り入れ、経営戦略や事業戦略を検討しています。
(2)シナリオプランニングの特徴
シナリオプランニングには、以下の3つの特徴があります。
①バックキャスティングアプローチ
現在を起点に未来に向けた対応を構想するのではなく、あくまでも未来から現在に逆算して考える「バックキャスティング」のアプローチを取ります。昨今トレンドになっている「SDGs」は、2030年までの持続可能な世界の実現に向けた17の目標を設定しており、バックキャスティングの思考に基づいています。
バックキャスティングで考えることで、短期ではなく、5~10年以上の中長期的な視点で検討することになります。
②未来が複雑で予測困難な場合に活用される
従来、連続的で予測可能な未来を前提にして戦略立案が行われてきました。そのような場合においては、シナリオプランニングの出番はありません。
一方で、現在の延長線上に予測可能な未来があるとは考えられず、複雑で将来への見通しが立てにくい場合に、シナリオプランニングの手法が役立ちます。
③探索と準備がポイント
複数の未来を想定する際においても、将来に向けた戦略・施策を検討する際においても、大前提として「正解」はありません。複数シナリオを想定しながら、未来やそこでのリスクに向けた準備を柔軟に、かつ思慮深く行っていく姿勢が重要です。
なぜシナリオプランニングが重要なのか
今なぜ、シナリオプランニングに注目が集まり、重要視されているのでしょうか。それには昨今の社会的背景が関係しています。
先行きが不透明で、将来の予測が困難であるという昨今の時代認識として「VUCAの時代」というワードが盛んに使われています。
「VUCA」は、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つの特徴・性質に由来しています。新型コロナウイルスや気候変動による社会経済環境の変化は、まさにVUCAの時代を象徴しているといえるでしょう。
これらのことから、長期的な視点から起こり得る未来の可能性を見て、行動することがビジネスにおいても求められています。誰もが納得する共通のビジョンの設定は困難になっていますが、変化を絶えず捉え、それをもとに意思決定していく必要があります。
前述したように、シナリオプランニングは、①バックキャスティングアプローチ、②未来が複雑で予測困難な場合に活用される、③探索と準備がポイントという3つの特徴があり、VUCAの時代との相性が良いため、重要性が高まっていると言えます。
シナリオプランニングの活用場面
ここまでシナリオプランニングの概要や重要性を説明してきましたが、全ての場合において有効な手法というわけではないので、使いどころを良く理解しておく必要があります。
シナリオプランニングは具体的に、「現在の戦略・施策の妥当性の検証」、「未来のシナリオを踏まえた戦略・施策の立案」の二つの場面において活用されます。
また、シナリオ・プランニング活用の条件としては、以下が挙げられます。
・5〜10年以上の中長期的な対応が必要で、かつ長期的な視野で取り組める余裕がある場合
・自社を取り巻く環境の不確実性が高い場合
シナリオプランニングは、短期的な事業開発には向いていないというデメリットもあります。加えて、連続的で予測可能な未来が前提であれば、従来通りの戦略立案で十分です。シナリオ・プランニングが必要かどうか、自社の状況を見極めた上で判断しましょう。
シナリオプランニングの活用手順
最後に、シナリオプランニングの活用手順、活用方法について紹介します。
SETP1 問いを設定する
最初に、シナリオ・プランニングを用いて何を決めるかという「問い」を明らかにします。
加えて、シナリオを描くにあたっての範囲を定めるためにも、自社の市場や時間軸(何年後のことを扱うのか)を定義すると良いでしょう。
STEP2 未来に影響を与える要素を洗い出す
次に、関連領域についての情報収集を行い、外部環境を分析することで、未来に影響を与える要因をできるだけ網羅的に洗い出します。
例えば、PESTEL分析を活用すると、以下の項目について多面的に分析することができます。
- Political(政治面)
- Economic(経済面)
- Sociological(社会面)
- Technological(技術面)
- Legal(法律面)
- Environmental(環境面)
PESTEL分析の詳細については、こちらの記事が参考になります。
新規事業で使えるPESTLE分析を徹底解説
SETP3 重要度の大きい要因を特定する
STEP2で洗い出した要因をもとに、未来を左右するような重要度の大きい要因を決定します。重要度の大きさについては、自社への影響度を示す「インパクト」と「不確実性」の二軸でマトリクスで可視化し、評価すると良いでしょう。
マトリクスを参考にしながら、最終的には未来に影響を与える要因を二つ決定します。
STEP4 未来のシナリオを描く
STEP3で導き出した二つの要因をもとに、未来のシナリオを作成します。ここでは、二つの要因を組み合わせてマトリクスにし、ストーリーを文章として加えます。
例えば、「密集型から分散型へ」と「賃貸契約の増加」の二つの要因の場合、以下のような4つのシナリオを描くことができます。
1 | 分散×購入 | リモートワークの推進や密集地への拒否感から、地方に定住する人が増える |
2 | 集中×購入 | 都市部に住む利便性によって、人々の価値観は大きく変わらず、リモートワークの推進によって、定住する人が増える |
3 | 分散×賃貸 | リモートワークの推進や密集地の拒否感から、住宅を気軽に変えたり、色々な場所に住んでみたいという人が増える |
4 | 集中×賃貸 | 都市部に住む利便性によって、人々の価値観は大きく変わらず、転勤なども考慮して賃貸で住む人が多い |
STEP5 シナリオを踏まえて自社事業を検討する
STEP4で作成した複数のシナリオに基づき、事業の戦略・施策の立案や検証を行います。新規事業の創出を目指す場合は、シナリオを踏まえて事業のアイデアを考案することも有効です。
まとめ
シナリオプランニングとは、中長期的な将来において「起こり得る未来」の可能性を複数描き、その結果を様々な検討の材料として活用する手法です。特徴や活用場面を理解すれば、VUCA時代でも通用する中長期戦略を作れる可能性が高まります。5~10年単位での戦略や施策の検討、未来を見据えた新規事業を創出する際には、ぜひシナリオプランニングを活用いただければと思います。
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