2023.12.22

アドバンテージマトリクスとは?事業戦略や業界分析での活用方法を解説

アドバンテージマトリクスとは?事業戦略や業界分析での活用方法を解説

アドバンテージマトリクスとはボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が考案したフレームワークで、業界の競争環境を分析し、事業の経済性を評価する際に使います。事業の方針を考える際に欠かせない分析手法の1つですので、ぜひ本記事を読み、新規事業や自社事業の戦略立案に役立てましょう。

アドバンテージマトリクスとは?

アドバンテージマトリクスとは「競争上の競争要因(戦略変数)が多いか少ないか」と「事業の中で優位性を構築できる可能性が高いか低いか」の2×2=4つのタイプに事業を分け、分析するフレームワークです。

競争要因(戦略変数)とは

競争要因(戦略変数)とは、「何で勝負が決まるか?」という要素のことです。競争要因(戦略変数)が多く複雑になると勝負は決まりにくく、競争は激化します。

スマホを例に取ると、料金やメーカー、大きさ、カメラの性能、スペックなどが競争要因としてあげられます。

優位性とは

優位性とは事業規模を拡大しやすいかどうかのことを指します。つまり、規模の経済性が働きやすいかどうかということです。例えば、美容院などの場合、規模を拡大し全国展開を狙ったとしてもその分コストも増えるので収益性は上がりにくい一方、クラウド型ソフトウェアサービスなどの場合、規模の拡大によるコスト増加は少なく、増収につながります。

アドバンテージマトリクスで分類される4つの事業タイプ

分散型事業

分散型事業とは競争要因が多く、かつ規模の拡大による他社との優位性が構築しにくいようなタイプの事業を指します。規模の経済性が働きにくく、規模を大きくすると逆に収益性の維持が難しくなることから、この分野では大企業は少なくなっています。事業の成功には規模を小さく保つことが重要です。

分散型事業となる業界の例としては飲食業界などがあげられます。飲食業界は「どの料理で勝負するか」や「価格帯」、「立地」のように競争要因が多く存在する一方で、規模を拡大したとしてもその分コストがかさみ、優位性を構築しにくいといえます。

特化型事業

特化型事業とは競争要因は多く存在するものの、ある分野やセグメントなどに特化して独自の地位を構築することで優位性を構築しやすいような事業です。専門性が高く、ニッチな事業などがこれ当てはまります。

事業規模と収益性に相関はなく、どの分野やセグメントに特化するのかといった戦略によって収益性は大きく左右されます。

例えば、医薬品業界などは特化型事業にあげられるでしょう。日本の新薬メーカーに注目してみると、アステラス製薬は泌尿器や移植、第一三共は循環器、大塚HDは中枢神経系に強みを持っています。まさに、各社ともに専門性が高くニッチな分野やセグメントに特化して、それぞれ独自の地位を築いているような状態です。

手詰まり型事業

手詰まり型の事業とは競争要因も少なく、かつ優位性も構築しにくい、企業間の差が生まれにくいような業界を指します。中規模・小規模の企業は淘汰され、大企業は規模の拡大が限界に達し、優位性が構築できなくなった状態です。この領域で事業を成功させることは難しいため、新規参入はせず、また既にこの領域にいる場合は早期撤退が望ましいとされています。

例えば、鉄鋼業界やセメント業界などが該当します。このような業界ではサービスの差別化が非常に難しく、また規模を拡大するにしても原材料費などがそれに比例して必要であり、収益性が上がりません。

規模型事業

規模型事業とは競争要因が少なく、他社との差別化を試みても、競合優位性が生まれにくいような領域です。この領域では、生産量や販売量を増やすとコストダウンがはかれる「規模の経済性」が働きやすく、この規模自体が競合優位性となります。

もちろん、規模が大きく、より多くのシェアを獲得しているほど収益性も多くなります。

日本の自動車業界やコンピュータ業界は規模型事業にカウントされます。コンピュータ業界を考えると、マイクロソフトやAppleのたった2つの企業が業界をほぼ占有しています。実際、両社ともにコンピュータで大きく差別化はできていないものの、業界シェアはかなり大きくなっています。

アドバンテージマトリクスを事業戦略立案に活用しよう

アドバンテージマトリクスや4つの事業タイプについてご紹介したところで、実際に事業戦略立案にどのように役立てていけるのかを説明していきます。

自社事業や新規事業の事業タイプを分析

まずは、自社事業や検討している新規事業がどの事業タイプにあたるのかを分析しましょう。「この事業は競争要因が多いか?」と「この事業は規模の拡大による増収が見込めるか?」という2つの項目について考えると、どの事業タイプか判別できます。

競争要因の多さについては、その業界に属する既存事業は他社事業と比べて明確に差別化できているか?何で差別化しようとしているのか?などに注目してみると考えやすいでしょう。

また、規模の経済性が働くかどうかについては、その事業のコスト構造を把握し、規模の拡大に伴って、1つの製品、またはサービスあたりのコストが減少するのかを考えましょう。例えば、工場の設備のような固定費や開発研究費などは規模の拡大に比例して増えないコストで、規模の経済性が働いていると言えます。

事業タイプを判別できれば、増収のためには「何かに特化すべきか?」「規模の拡大は妥当なのか?」「そもそも撤退すべきなのか?」のような項目について予測がつき、事業戦略の立案に役立てることができます。

事業タイプを転換することで収益があがることも

ある事業タイプに縛られて考えていても、事業成功の突破口を見出すことができない場合もあります。そこで、敢えて事業タイプを転換してしまうのも戦略の1つです。

規模型事業に分類されるコンビニ業界においてシェア2位を占めるローソンについての例があります。増収には規模の拡大が妥当ですが、規模の拡大を図ると最大手のセブンイレブンが黙っていません。そこで、ローソンが売った手は「100円ローソン」で低価格帯に特化したり、「成城石井」を買収し富裕層に特化するという戦略です。ローソンは見事、「規模型事業」から「特化型事業」へ事業タイプを転換したのです。

まとめ

いかがでしたか?アドバンテージマトリクスは新規事業・既存の自社事業などの事業戦略立案に有用なフレームワークの1つです。ぜひ、有効に活用して事業を成功に導いてください。

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