2023.11.21

オープンイノベーションの浸透を妨げる要因とは?

オープンイノベーションの浸透を妨げる要因とは?

Batteryでは、オープンイノベーションについてその歴史、概要、事例などをご紹介しています。
今回は、オープンイノベーションの概要について振り返りつつ日本国内での浸透を妨げている要因と解決策についてご紹介したいと思います。

オープンイノベーションとは?

オープンイノベーションとは、企業と他企業または大学等が連携して、アイデアから新たに価値を創造することを指します。
例えば、積水化学工業は海外のベンチャー企業である LanzaTech社と共同で、ゴミをエタノールに変換する技術を確立しました。
東京ガスは、スタートアップ等と連携し、家電の情報を一元管理できるサービスなどを実現しました。
様々な成功例はありながらも、日本におけるオープンイノベーションの導入は欧米と比較して遅れているといえます。

  (引用元:NEDO オープンイノベーション白書 第二版 )

オープンイノベーションの重要性とメリット

オープンイノベーションの対義語として「クローズドイノベーション」という言葉があります。研究開発・製品化を自社で行う自前主義の企業のあり方を表しています。
クローズドイノベーションはかつて主流でしたが、そのままではスピード感を増す市場への適応が難しくなってきています。

オープンイノベーションでは、企業外部の資源を積極的に活用します。
そのメリットは大きく分けて3つあります。まず、高付加価値の製品を開発できることです。
社外から積極的にアイデアを導入することで、捉えきれていなかった市場のニーズを拾い上げることができます。
次に、コスト削減が挙げられます。既存の技術を取り込むことで、1から自社で作り上げるコストやリスクを回避できます。
そして、開発期間の短縮が可能になります。既存の技術を活用することで、プランを迅速に形にしてPDCAサイクルを回すことができます。

まさに、スピード感のある市場への強力な対抗策といえるでしょう。
しかし、前述の通り、オープンイノベーションが日本国内に十分に浸透し、成功しているとはいえません。
一体なぜなのでしょうか。

オープンイノベーションの阻害要因

オープンイノベーションの普及と成功を妨げている要因と解決策について、性質ごとに分けて見ていきましょう。

連携のモチベーション不足

日本企業には自前主義が根強く、徐々に変革しつつあるとはいえ、まだ人材や技術の流動化は進んでいません。
生き残りをかけてまで意識改革をする必要性を感じていない企業も多くないと考えられます。
また、大学では研究者の研究費を外部から獲得しようという意識は海外と比べて低いと言われています。
企業同士でも、産学連携でも、オープンイノベーションを行おうというモチベーションが生まれにくい環境にあるのかもしれません。

これは、オープンイノベーションの重要性を感じていないことにも一因があると考えられます。まずは選択肢のひとつになるように、オープンイノベーションの有用性について広く知ってもらう必要があるでしょう。

また、連携して付加価値の創造まで繋げようとする意欲が双方になければいけません。付き合い程度の連携では利益は生まれず、オープンイノベーションは失敗してしまいます。

技術を洗練する資金の不足

大学では、研究者の高齢化と若手研究者の不足が進んでいます。雇用と財政の不安定化が深刻であることに加え、前述の通り学外への意識も高くありません。

さらに、研究結果をそのまま活かすのが難しい場合、ある程度技術を形にして企業が取り入れやすいように整える必要があります。
これはベンチャー企業の役割のひとつですが、日本ではベンチャー企業が生まれにくい環境にあります。
これは、企業がベンチャー企業を買収する件数が少なく、また投資額も少ないことが影響しています。
企業が連携を決めたとしても、技術を活かせなければオープンイノベーションは失敗に終わってしまいます。

これを改善するためには、若手の研究者を企業と積極的に繋げる必要があるでしょう。
これは後の問題にもつながりますが、連携の仕組みづくりも大切です。

連携先策定の高いハードル

2015年の調査では、国内外、企業同士、産学連携のいずれでも半数以上の企業が「必要な技術やアイデア等を有する適当な連携先が見つけられない」ことを問題としてあげています。
海外では、研究者自ら技術を売り込んだり人と人との繋がりで成立することが多いですが、日本では頻繁ではありません。
対象の技術を見つけられたとしても、必要なものとずれがあればオープンイノベーションは失敗しています。
また、連携後のスピード感や売り上げの配分も十分にすり合わせておく必要があります。

そこで、技術と利用したい企業をマッチングさせる仕組みづくりが必要であると考えられます。
膨大な技術を集約しなければ、足がかりのない企業にとっては技術を探し始めることすら難しいでしょう。

まとめ

オープンイノベーションは現時点で活用されているとは言い難いですが、これから欠かせない技術活用の手法となります。
オープンイノベーションについて知ることで、皆さんにとってもっと身近なものに感じられたら幸いです。

参考文献

●オープンイノベーション白書 第二版 | NEDO, JOIC
https://www.nedo.go.jp/content/100879991.pdf

●オープンイノベーション 白書 第二版 (概要版) | NEDO, JOIC
https://www.nedo.go.jp/content/100879992.pd

●平成27年度産業経済研究委託事業 (企業の研究開発投資性向に関する調査)報告書 | 未来工学研究所https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2016fy/000583.pdf

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