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2022.3.2

破壊的イノベーション・持続的イノベーションとは?

破壊的イノベーション・持続的イノベーションとは?

イノベーションとは、日本語で「革新・刷新・新規軸」などと訳されることが多くあります。モノ、サービス、プロセス、組織などに新たな提供価値を取り入れて革新的な状態を創出することを意味します。近年、市場の低迷や飽和状態が続く業界が多く、企業の持続的な成長を続けるために避けては通れない重要なキーワードとなっております。特にIT分野での目覚ましい技術革新の影響で社会的にも大きな変化がもたらされ、各企業のイノベーションに対しての取り組みが活発化しています。

昨今のビジネスの現場は、VUCA時代と呼ばれるようにテクノロジーの進化によって、周辺環境の変化が激しく、先行きが不透明で将来の予測が困難な状態にあります。そんな中で市場での競争優位性を高め、企業が持続的な成長を続けていくためには絶えずイノベーションを推進することが不可欠となってきました。

本記事では、上記のような背景も踏まえて、アメリカ出身の経営学者であり、ハーバードビジネススクールの教授も勤めたクレイトン・クリステンセンの初の著書「イノベーションのジレンマ」の中で紹介されている「破壊的イノベーション・持続的イノベーション」について解説していきます。

破壊的イノベーションとは?

破壊的イノベーションとは、新技術やアイデアで既存市場の常識や価値観を劇的に変化させることを目的としており、今までとは全く異なる提供価値での既存市場への参入、または、全く新しい市場を形成することにより、新しいバリューネットワーク(市場における生存環境・生態系)を創造する概念、製品、またはサービスを意味します。

市場参入初期は、既存の製品、サービスに比べて、市場が形成されておらず、既存顧客のニーズとはかけ離れたものになり、ニッチな市場、顧客しかターゲットになりません。そのため市場参入後、提供価値の認知度を広めながら、顧客ニーズを拾い、改良を重ねていくことで、既存市場での主要な顧客ニーズに擦り合わせていき、市場を徐々に形成していく必要があります。破壊的イノベーションによって創出された製品・サービスは競合との差別化が明確であるために既存顧客のニーズと合致した場合には市場シェアを一気に高める可能性を持っているのが魅力の一つです。

破壊的イノベーションは提供価値の違いによって、さらに2種類に分類されます。

既存市場の製品、サービスの限定的な性能で圧倒的な低価格で提供する「ローエンド型破壊的イノベーション」。具体的な製品、サービスや企業として、LCC、回転寿司、アイリスオーヤマ社 家電事業、ユニクロ社 ファストファッション、などが挙げられます。

もう一つが、今までの製品、サービスと全く違う新たな価値を付与した機能やサービスを提供する「新市場型破壊的イノベーション」。具体的な製品、サービスや企業として、Apple社 iPhone、iRobot社 ルンバ、任天堂社 Wii、SONY社 ウォークマン などが該当します。

ローエンド型破壊的イノベーションの特徴

ローエンド型破壊的イノベーションでは、すでに市場に参入しており、一定の市場、顧客、シェアを保持している企業の製品、サービスに対して、新技術やアイデアで既存企業と差別化できる安価な商品を開発し、既存企業のハイエンド商品、サービスに対抗したローエンド商品、サービスで市場に参入します。

性能としては既存製品、サービスには劣るものの、顧客ニーズを上回る過剰品質のを上回る過剰品質の状態に対して顧客ニーズに即した必要最低限のスペックを備えたもので、より購入しやすい圧倒的な低価格での提供を行います。参入初期は競合優位性のある価格を武器にローエンド市場でシェアの拡大を進めます。市場参入後は、改良を重ねていき、最大の強みである低価格を維持しながら性能を向上させることで、元々のターゲットではなかったハイエンド市場でのニーズに満たすレベルのものを開発、販売を行い、既存企業の商品、サービスから市場を奪い取ることも多く見られます。

ローエンド型破壊的イノベーションの事

LCC(格安航空会社 / Low Cost Carrier)

LCCとして、日本ではピーチ・アビエーション社やジェットスター社、スカイマーク社などをよく耳にすることが多いと思います。

ANA社やJAL社といった既存の航空会社では、路線数、機内サービスなど高品質な商品、サービスを提供していた中で、LCCではサービスを必要最小限に留め、需要の高い特定の路線のみに絞ることで既存の航空会社と比べて、圧倒的な低価格を実現しました。従来の高額な航空券を買えなかったローエンド層の新しい市場を獲得、また既存の高額な航空券を購入はしていたが高いと感じていた既存市場からのシェアの奪い取りに成功しました。

アイリスオーヤマ

アイリスオーヤマ社は、元々、収納家具やペット用品などの生活用品メーカーであった企業が2009年より家電事業に本格参入しました。シンプルな機能とリーズナブルな価格帯で市場に参入し、爆発的な売り上げを記録しました。今では会社の売上の半分以上が家電事業となっており、ローエンド型破壊的イノベーションとして大きな成功を収めた企業の一つと言えます。またアイリスオーヤマ社での特徴的な点として、競合のハイエンド市場での家電メーカーから多くの技術者を雇い入れており、ハイエンド市場で培った顧客ニーズ知見や高い技術力を活かしたシンプルな機能ではありながらも性能としては市場ニーズに十分応えられるようなものづくりを行なっている企業です。

新市場型破壊的イノベーションの特徴

新市場型破壊的イノベーションでは、新技術やアイデアで既存市場の常識や価値観を劇的に変化させ、新しい価値観に基づいた新市場を創出します。競争が激しく、すでに多くの企業が参入しているレッドオーシャン領域ではなく、独自の提供価値を強みとして市場に参入できるので競争相手が少ないブルーオーシャン領域でビジネスを展開することができます。

競合相手がいないという大きなメリットはありますが、企業がビジネスを展開している既存市場に比べて、新市場型イノベーションで開拓する市場ではすでにニーズが顕在化している価値とは違った価値を提供するので、そもそも顧客ニーズがあるかどうか、市場が存在しているか不明確な領域であることが多くあり、リスクが高いアプローチになります。参入当初は改良コストや販売数量が出ないこともあり、収益が大幅に下がる可能性が高いです。大企業などはやはり既存事業で高収益のビジネスモデルを確立していることからできる限りリスクを取りたくない企業が多い傾向にあるため、新市場型破壊的イノベーションに目を向けないことが多々あります。

しかし、市場形成前のタイミングで先駆者として参入し、時が経つにつれて潜在的な市場ニーズが顕在化したタイミングで製品、サービスを提供できると一気に売上とシェアを獲得できる可能性があります。近年、グローバル化やIT化が進み、周りの環境が大きく変化している中で新市場型破壊的イノベーションを推進できるかどうか、柔軟に周りの環境に対応できるかどうかが今後、企業が持続可能な成長を続けていくために非常に重要なポイントとなってきており、企業の規模問わず新市場型イノベーションを求めている、推進しようとしている企業は多くなってきています。

新市場型破壊的イノベーションの事例

Apple社 iPhone

Apple社が開発したiPhoneは新市場型破壊的イノベーションとして最も成功した例の一つとして言えるのではないでしょうか。今までの既存の携帯電話では、電話、メールといった機能がメインであったものに対して、携帯電話の機能を含んだ小型コンピューターという画期的なコンセプトと提供価値の元、音楽プレイヤーやアプリプラットフォームなどを機能として付与した全く新しい携帯電話を開発しました。今では携帯電話の市場シェアの半分以上がiPhoneであり、今の生活になくてはならない製品、サービスになっています。

iRobot社 ルンバ

今では一般的となっているロボット掃除機の先駆者のiRobot社のルンバも、新市場型破壊的イノベーションの一つとなります。人間が掃除機をかけるという当たり前な活動をしなくてもよくなるロボットが勝手に掃除をしてくれるという画期的なコンセプトと提供価値を創出し、製品開発を行いました。日本での販売初期は体重計と間違われることがあるほど掃除機としての認知はされず、全く売れませんでした。初期のモデルから徐々に改良を重ねつつ、認知度を広めていく活動を行ったことで新市場での受容度を高めていき、市場での地位を確立しました。

持続的イノベーションとは?

持続的イノベーションとは、既存製品の性能を向上させることを目的としており、市場、顧客がすでに明確に存在しており、性能や品質を向上させながら新たな価値を生み出すことを意味しております。破壊的イノベーションと比べて、すでに市場が形成されているため、収益性が高く、リスクが低いため、大企業の経営戦略の主軸として挙げられることが多い傾向にあります。持続的イノベーションは変化の度合いによってさらに2種類に分類されます。

製品やサービスの既存性能や品質がアップデートされた過去のものから連続的に進行するものが「漸進的イノベーション」、具体的な製品、サービスとして、テレビ、自動車、などがよく挙げられます。

もう一つが、革新的な変化が起こった過去のものから不連続的に進行したものが[急進的イノベーション」。具体的な製品、サービスとして、LED電球、デジタルカメラなどがよく挙げられます。

漸進的イノベーションの特徴

漸進的イノベーションとは、既存製品やサービスを徐々に改良していき、性能を高めていくもので、多くは新しい市場を生み出さず、新しいテクノロジーを活用することもありません。改善前の製品、サービスよりも優れ、多くの機能が維持されてることが多く、製品の中心機能は変更されることはなく、継続的な改善を行っていきます。

すでに市場が形成されており、同様の製品、サービスを利用している顧客が多く存在しているので、開発、販売するリスクが低く、一定の売上を早々に想定することができます。利用顧客のフィードバックから特定されたニーズを満たすため、値段などを気にせず購入する顧客を引き付けることができ、また同じ機能と価値を低コストで提供できるため、製品、サービスをより大きな市場に展開することができます。

漸進的イノベーションの事

テレビ

テレビは1953年に初めて販売されてから、絶えず改善されており、常に新しいモデルを購入することができます。シャープ社が国産第1号として販売した白黒テレビから始まり、カラーテレビ、ハイビジョンテレビと機能が改良されていき、サイズとしてもブラウン管から薄型テレビと改良され、今の状態があります。コスト面でも現在では50インチの液晶テレビはわずか数万円で販売されていますが、今後、75インチの液晶テレビを同じような金額で購入できる日も漸進的イノベーションにより実現される日もそう遠くないでしょう。

自動車

自動車は新車が販売されてから一般的に同じ車種で数年おきにモデルチェンジが行われます。低燃費やデザインの変更などを常に繰り返し、顧客のニーズに答えるような改良を行なっています。例えば、2010年の時点で、スズキ社が販売しているワゴンRのFXリミテッドグレードの燃費が約20km/L(※モードにより変動)であったのに対して、現行のハイブリッドFXグレードでは燃費が約30km/Lと10年前に比べてモード燃費が約1.5倍に向上しています。

自動車業界では長年持続的イノベーションとして成り立っておりましたが、技術革新によりEV化を促進するテスラ社や、自動車のシェアリング化を進めるタイムズ24社など各社が業界に大きな変革を及ぼしており、100年に一度の変革期と呼ばれております。まさに破壊的イノベーションの状態に突入しています。

急進的イノベーションの特徴

急進的イノベーションは、世界の問題を解決し、今までにない方法でさまざまなニーズに対応するだけでなく、解決されていなかった問題に解決策を提供し、市場や経済全体を飛躍的に変革します。漸進的イノベーション同様にすでに市場としては形成されており、一定の顧客がいる状態になるので開発、販売までたどり着けばリスクは少なく大きな収益を獲得することができます。近年ですとブロックチェーン、全ゲノム配列決定、ロボティクス、量子コンピューティング、自動運転、人間拡張技術などが挙げられます。しかし、急進的イノベーションで扱っているテクノロジーは非常に高度なため、市場への参入に時間がかかるので、発生確率は低いと言われています。

急進的イノベーションの事

LED電球

2009年にパナソニック社が開発・販売をしたLED電球が急進的イノベーションの事例となります。LED電球開発以前の既存の白熱電球と電球形蛍光灯にはそれぞれ課題がありました。白熱電球はサイズが小さく調光可能ですが、消費電力は大きく短寿命、電球形蛍光灯は光色が豊富で省エネ・長寿命ですが、蛍光灯の特性上、調光性能には限界がありました。そこでパナソニック社は白熱電球と電球形蛍光灯の特長を包括しながら課題を解決し、十分な調光機能を備えた省エネ性能を最大限に持つLEDの開発・販売を行い、市場に急進的イノベーションを起こしました。白熱電球の寿命は1,000~2,000時間程度、蛍光灯の寿命は1万3,000時間程度といわれていますが、LED電球の寿命は約4万時間といわれています。

デジタルカメラ

1995年にカシオ計算機社が開発・販売をしたデジタルカメラ「QV-10」も急進的イノベーションの事例となります。今では当たり前の機能となっている液晶モニターを世界で初めて搭載し、1年で20万台を売り上げる大ヒットとなりました。それ以前のデジタルカメラではモニターがなく、撮影した写真をビデオ出力するか、PCに取り込まない限り確認ができない課題がありました。その課題に対して液晶モニターを搭載することで撮影したその場で写真を確認ができる仕様となり、ビジュアルコミュニケーションツールとして活用されました。また当時の画質は約20万画素相当であり、カシオ計算機社の現行モデルでは高いものでは1600万画素を超えるものが存在しております。急進的イノベーションで開発された液晶付きのデジタルカメラが漸進的イノベーションで改良されてより品質の高いものへと変化していきました。

まとめ

本記事ではクレイトン・クリステンセンの著書「イノベーションのジレンマ」の中で紹介されている「破壊的・持続的イノベーション」について解説をしていきました。身近にある製品やサービスでもイノベーションによって生み出された製品・サービスは多くあり、それがどのようなイノベーションであり、どのような戦略・戦術のもと起こったのかを分析することで、自社で新製品・サービスを検討する際は「破壊的イノベーション」、「持続的イノベーション」という分類のもと、どのセグメントでアプローチしていくべきなのか参考にしてみてください。

また参考までにイノベーション分類といっても決して「破壊的イノベーション」、「持続的イノベーション」のみではなく、他にも多くの観点でイノベーション分類と理論が提唱されております。例えば、イノベーションの祖と言われているオーストリアの経済学者、ヨーゼフ・シュンペーターが提唱する5つのイノベーション理論として、イノベーションを起こす対象のセグメント別に分類されている「プロダクトイノベーション」、「プロセスイノベーション」、「マーケットイノベーション」、「サプライチェーンイノベーション」、「オーガニゼーションイノベーション(組織改革)」

アメリカの組織理論家、ヘンリー・チェスブロウが提唱するイノベーション理論として、

イノベーションを促進するための内部リソースのみだけではなく、外部リソースも活用する組織体で分類している「オープンイノベーション」、「クローズドイノベーション」などをよく耳にすることが多いと思います。

VUCA時代の中で持続的な成長を続けていくためにも、自社事業において様々な観点でイノベーションに関する現状分析を行い、どの部分が取り組むべき課題であるのかを明確にし、適切なイノベーション手法に取り組んでみてはいかがでしょうか?

参考文献

・クレイトン・クリステンセン 著書「イノベーションのジレンマ」

快進撃を続けるアイリスオーヤマ、家電開発部長に聞く「なるほど家電」の作り方

iPhoneシェア率が多い?日本と世界のスマホ市場を調査【2021年11月】

掃除ロボット「ルンバ600シリーズ」が4万9800円から–日本向けの独自設計で登場

クルマの燃費性能はこの10年でどれだけ進化したのか?

あかりの歴史 LED電球第1号 誕生秘話

カシオ開発秘話! 20年前、「QV-10」は実は“カメラ付きテレビ”のはずだった

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