2023.10.17

新規事業に必須のマネタイズモデルとは?7種類と検討方法をポイントを押さえて解説

新規事業に必須のマネタイズモデルとは?7種類と検討方法をポイントを押さえて解説

事業の目的は社会課題の解決や社会を豊かにすることですが、営利企業である限り、収益を得なければ事業を継続することはできません。

今回は、そんな事業に必要不可欠の収益を得る方法「マネタイズモデルの種類」「検討方法」について解説します。

マネタイズモデルとは

マネタイズ

最初にマネタイズモデルの定義について説明します。
ここでのマネタイズモデルとは「収益を得る方法」を指しています。

どのように価値を創造し、顧客に届けるかを論理的に記述したビジネスモデルとは異なり、結局何をすることで収益を得るのかという点のみに着目しています。

マネタイズモデルはビジネスモデルの一要素として包含される概念です。

マネタイズモデルの重要性

マネタイズ

新規事業開発においてマネタイズモデルを検討することは必要不可欠です。
事業の目的は社会課題の解決や社会を豊かにすることですが、営利企業である限り、収益を得なければ事業を継続することはできません。
そのため、収益を得る方法としてマネタイズモデルを検討する必要があります。

また、マネタイズモデルは何でも良いわけではありません。
例えば事業によって解決したい課題のうちの1つに、「既存サービスは初期費用が高くてサービスを導入できない」という課題がある場合、1回売り切りの販売モデルよりも、初期費用の負担がなく、月額など一定期間に定額を課金する「継続課金モデル」の方が適しています。

事業にとって不適切なマネタイズモデルを採用してしまうと、前述のように課題の1つが解決されなかったり、顧客がサービス(事業)を利用する阻害要因となり、想定よりも売上が伸びないなど、事業が生み出す売上/利益にも影響します。
売上/利益の大きさは、事業の健全性や価値の高さを測る尺度となるため、事業にとって最重要事項の1つです。

つまり、マネタイズモデルは思いつきで決めるのではなく、どのモデルが事業に適しているかをしっかり検討する必要があるのです。

マネタイズモデルの検討タイミング

マネタイズ

マネタイズモデルを検討するタイミングに絶対的な正解はありませんが、大きくは以下3つのタイミングで検討することが多いです。
新規事業開発の各フェーズの詳細については、下記の記事をご確認ください。

仮説検証の方法とは?検証コストを最適化した進め方について解説

  1. アイデアの初期検証フェーズ(Idea Consideration)
    マクロ環境分析や3C分析などにより、事業仮説にノックアウトファクターがないかを検証するフェーズです。一般的に、当フェーズにおいてマネタイズモデルの検討は必須ではありませんが、仮説を検討しておくことで、分析から得られる評価の具体度が高まるなどのメリットがあります。
  2. 解決案の検証フェーズ(Problem Solution Fit)
    想定している解決案(プロダクト)で本当に顧客の課題を解決できるのか、本当に顧客がお金を払うほどの価値を感じるのかなど、課題と解決案がフィットしているかを検証するフェーズです。顧客に解決案のプロトタイプを提示/利用してもらい、反応を伺うことで課題と解決案がフィットしているか検証していきますが、どのような形でお金を支払うのかも解決案の一部ですので、マネタイズモデルも一緒に提示し、顧客の反応を伺うのが望ましいです。
  3. 収支計画が必要となるタイミング
    企業内で新規事業開発の予算を申請する場合や、独立して投資家から資金調達をする場合、事業の規模や成功可能性を判断する材料として3-5年の収支計画が求められるケースが多いです。収支計画は売上や費用、利益を予測したものになりますが、売上を算出するには解決案(プロダクト)の価格を設定する必要があるため、必然的にマネタイズモデルも設定する必要があります。

マネタイズモデルの種類

マネタイズモデルは、大きく7タイプに分けられます。
7つの中でも市場に存在する既存サービスで頻繁に採用されているのは、No.1-5のモデルです。

また、「販売モデル」「利用課金モデル」については、マネタイズモデルがさらに細分化できるため、詳細を別表にて紹介します。

マネタイズモデル表

1.販売モデル

  • 概要
    • プロダクト(商品やサービス)を売って収益を得るモデル
    • 一度プロダクトを売れば、原則取引が完結する売り切り型 ※プロダクトの所有権が移る。
  • 代表例
    • 販売モデルは、さらに細分化が可能なため、詳細は後述

2.利用課金モデル

  • 概要
    • 売り切り型ではなく、プロダクト(商品やサービス)の利用に応じて課金することで収益を得るモデル
    • プロダクトには知的財産も含む ※プロダクトの所有権は移らない。
  • 代表例
    • 利用課金モデルは、さらに細分化が可能なため、詳細は後述

3.手数料モデル

  • 概要
    • 条件に応じて得る手数料を収益とするモデル ※あげた成果に応じて収益を得る成果報酬モデルも含む。
  • 代表例
    • 人材紹介サービス
    • 不動産仲介サービス
    • 販売代理/販売取次サービス

4.利息モデル

  • 概要
    • お金を貸付け、その利息を収益とするモデル
  • 代表例
    • 銀行の融資サービス

5.広告モデル

  • 概要
    • プロダクトを媒体にして広告を掲載することで収益を得るモデル
    • ユーザーを増やすためにプロダクトは低価格、または無料にすることが多い
  • 代表例
    • テレビ局の地上波放送
    • 雑誌、新聞、フリーペーパー
    • Google / Yahooなどの検索エンジン
    • YouTube / facebookなどのSNS

6.投資モデル

  • 概要
    • 株式や不動産なお度に投資し、配当や投資対象の価値向上などによって収益を得るモデル
  • 代表例
    • 投資ファンド
    • ベンチャーキャピタル

7.補助金 / 助成金モデル

  • 概要
    • 一定の条件を満たすことで国や自治体などから支給される補助金 / 助成金を収益とするモデル
  • 代表例
    • 介護サービス
    • 保育サービス
      ※これらのサービスは、利用課金モデルと補助金 / 助成金モデルの組み合わせ

販売モデルの詳細

販売モデル表

製造小売モデル
  • 概要
    • プロダクトを製造し、それを自社で直接個人に販売するモデル
    • 付加価値をつけ、プロダクトの原価に利益分を上乗せして販売する
  • 代表例
    • 農家
    • メーカー
小売モデル
  • 概要
    • 自社で商品開発や製造はせず、他社から仕入れて個人に販売するモデル
    • 仕入れ値に利益分を上乗せして販売する
  • 代表例
    • スーパーマーケット
    • コンビニ
    • 書店
    • ECサイト
      ※自ら商品開発をしている場合もあり。
製造卸売モデル
  • 概要
    • プロダクトを製造し、それを自社で直接個人に販売するのではなく、小売業者に販売するモデル
  • 代表例
    • メーカー
      ※仕組みやシステムを卸す場合、1回払い切りの場合は「販売モデル」。そうでない場合は「利用課金モデル」に分類。
卸売モデル
  • 概要
    • 自社で商品開発や製造はせず、中間業者として他社から仕入れて小売業者に販売するモデル
  • 代表例
    • 商社
      ※仕組みやシステムを卸す場合、1回払い切りの場合は「販売モデル」。そうでない場合は「利用課金モデル」に分類。

利用課金モデルの詳細

利用課金モデル表

継続課金モデル(サブスクリプション)
  • 概要
    • 月間や年間など、一定期間に定額を課金するモデル
  • 代表例
    • 動画配信サービス
    • SaaS系サービス
従量課金モデル
  • 概要
    • プロダクト(商品やサービス)の利用料に応じて課金するモデル
    • 必要な時に必要な分だけサービスを利用したいという顧客に受け入れられやすい
  • 代表例
    • 水道光熱費サービス
    • コンサルティング ※期間に応じて料金がかかるコンサルティングの場合は、継続課金モデルかフラット料金モデル
賽銭モデル
  • 概要
    • プロダクトへの支払額を顧客が決めるモデル
    • 最低金額や希望金額が顧客に提示されることもある
  • 代表例
    • Bears社提供の「あと値決め」の家事代行サービス
フラット料金モデル
  • 概要
    • サービス料金を一括で支払ってもらい、顧客に好きなだけサービスを利用してもらうモデル
  • 代表例
    • 飲食店の食べ放題サービス
    • 通い放題の英会話サービス
フリーミアムモデル
  • 概要
    • 最初の一定期間や基本料金は無料で、お金を支払うことでサービスの継続利用や追加機能が利用できるモデル
  • 代表例
    • Slack
    • Google Drive
    • LINE MUSIC
オープンソースモデル
  • 概要
    • 開発したプロダクトを公共資産として、または公共資産のプロダクトを活用して、コンサルティングやサポートなどプロダクトを保管するサービスで収益を上げるモデル
  • 代表例
    • NTTデータなどシステムインテグレーターが提供するオープンソースを活用したシステム構築サービス
ライセンスモデル
  • 概要
    • 自社の知的財産を使用許諾する代わりに使用料をもらうモデル
  • 代表例
    • ディズニーと東京ディズニーランド ※ディズニーはディズニーキャラクターの使用を許諾する代わりにオリエンタルランド社から使用料をもらっている
レンタルモデル
  • 概要
    • 車や備品などを貸し出すことで、収益を得るモデル
  • 代表例
    • レンタカーサービス

マネタイズモデルの検討方法

コイン

それでは、どのようにマネタイズモデルを検討すれば良いのでしょうか。

1つの方法として、「自社」「顧客/市場」「競合」の3つの観点から、マネタイズモデルを検討する方法を解説します。
いずれか1つの観点から検討するのではなく、3つの観点を総合的に評価して決定するのがポイントです。

自社の観点

自社のwillを実現するマネタイズモデルにするために必要な観点です。
「実現したいことは何か」からマネタイズモデルを検討します。

例えば実現したいことが「売上利益の最大化」であり、プロダクトがソフトウェアの場合、1回売り切りの「販売モデル」よりも、ユーザー(顧客)が利用を継続する限りユーザーから収益を得られる「継続課⾦モデル」の方が、LTVの限界値は高くなります。

また、実現したいことが「競合サービスの中でユーザー数No.1」であれば、ユーザーから収益を得る「継続課⾦モデル」よりも、ユーザーに無料提供し、広告主から収益を得る「広告モデル」の方が、ユーザー数が増えやすいため適していると言えます。

顧客/市場の観点

顧客に受容されるマネタイズモデルにするために必要な観点です。
「どのようなマネタイズモデルであれば顧客に受容されるか」からマネタイズモデルを検討します。

「新規事業におけるマネタイズモデルの重要性」で述べたことに近しいですが、初期費用の負担がないことを望む声が多い場合、1回売り切りの販売モデルよりも、初期費用の負担がなく、月額など一定期間に定額を課金する「継続課金モデル」の方が適していると言えます。

※顧客の声はインタビューやアンケートなどで取得する。

詳細については、下記の記事をご覧ください。

CPFフェーズにおける顧客インタビューの方法を徹底解説

競合の観点

競合の成功事例を分析/模倣したり、独自性のあるマネタイズモデルにするために必要な観点です。
「競合はどのようなマネタイズモデルを採用しているか」からマネタイズモデルを検討します。

例えばベンチマークしている競合サービスが「手数料モデル」の場合、その競合の成功と「手数料モデル」に因果関係があるかを分析します。
深い因果関係があり、他のマネタイズモデルでは代用できないようであれば模倣することが有力な選択肢になります。

反対に、因果関係がなく、他のマネタイズモデルで代用可能なのであれば、自社や顧客/市場の観点を重視してマネタイズモデルを検討すると良いでしょう。

※競合の情報はデスクリサーチで取得する。
※競合の成功とマネタイズモデルに深い因果関係があり、他のマネタイズモデルでは代用できない場合は、顧客の声に合致したマネタイズモデルである可能性が高い(顧客/市場の観点でも適している可能性が高い)。

マネタイズモデルの検討手順

これまでみてきた、マネタイズの種類・検討方法を踏まえると、マネタイズモデルの検討手順として、以下のようなものが挙げられます。

  1. マネタイズモデルの選択肢を前述の7タイプから洗い出す
    例:広告枠の設置が不可能な解決案の場合、「広告モデル」は選択肢から除外する。
  2. 自社の観点を検討し、顧客/市場、競合の観点の情報を取得する
  3. 自社、顧客/市場、競合の3つの観点の優先度を検討する
  4. マネタイズモデルの選択肢を、3つの観点から総合的に評価して決定する
    ※優先度に差異がある場合は、評価に反映する。

まとめ

マネタイズモデルの種類や検討方法について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。

マネタイズモデルは思いつきで決めてしまいがちですが、なぜそのマネタイズモデルであるべきなのかを突き詰めて考えることで、事業の成功確率が高まります。

この記事が皆さんの新規事業開発の一助となれば幸いです。

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